【ウォーキング】

「太ってきたな……」

 俺は体重計の数値を眺めつつ、溜息を吐く。
 この若さでメタボにはなりたくない。何よりモテたい!
 真っ当な理由と不純な動機ではあるが、ランニングをすることにした。
 今は暑い時期。早朝の涼しいうちがいいだろうと、目覚ましアラームをセットして、ランニングに挑んだ。

「ぜ~ぜ~」

 身体が鈍っているのか、走ることが辛い。軽く汗を流す程度のウォーキングにした。
 ウォーキングをしていると、毎日のように、見慣れた顔の人たちが同じように汗を流しつつ頑張っている。みんな晴れの日も雨の日も走っている。
 そんな光景に俺も刺激を受けて、頑張ってウォーキングをする。

「おはようございます」
「おはようございます!」

 見慣れた顔の人たちの中で、すれ違いざまに挨拶をしてくれる人がいたりする。
 今、挨拶をしてくれた女の子も、そのうちの一人である。俺は挨拶を返した。
 不純な動機も持ちながらウォーキングしている俺は、その女の子を意識してしまう。
 すごく可愛いというわけではないが、頑張っている女性は輝いて見える。その輝きに惹かれた。
 その輝きを見たいがために、その女の子が走っている時間帯に合わせて、俺もウォーキングを行う。
 自分の鈍った身体に、情けなさを感じつつ、彼女の隣に立てるような男になりたいと努力した。
 だがある日、ぱったりと会わなくなった。

(時間帯が変わったのか?)

 そう思い、自分も時間帯を変えてみたりする。だが、出会うことは二度となかった。
 俺もウォーキングをやめてしまった。目標を見失ってしまったからである。

 窓の外の雨の景色を見つめる。

(彼女にはもう会えないのだろうか……)

 片想いのままこの恋は終わってしまった。

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