私の名は黒狐。白狐ちゃんと仲良しなのです。
暖さまも恋坡さまも、お出かけをしていてお留守にしている時のこと。
白狐ちゃんが、本のお話をしてきた。
「ねえねえ、黒狐ちゃん。白崎なな大先生の『宇宙大戦争』って読んだ?」
白狐ちゃんは、読書家である。私もたまに後学の為に読書をするが、白狐ちゃんには及ばない。
「いや、白崎なな大先生の名前は知っているけど、まだ読んだことがないよ」
すると、白狐ちゃんが一つの本をお勧めしてくる。表紙には『宇宙大戦争』と書いてある。
……そして、読むこと三十分。読み終えると、白狐ちゃんが目をキラキラとさせて、提案してくる。
「ねえねえ、そのぴこぴこハンマーってやつ? 面白そうだから、二人でやってみようよ!」
「でも、このぴこぴこハンマーってやつが、よくわからないんだけど?」
「う~ん? 金槌みたいなやつじゃない?」
「ええ~、金槌なんて当たったら痛いよ!」
「もちろん金槌なんて使わないよ。そうだね……竹光に布をぐるぐると巻くとか?」
「あ、それなら大丈夫そう。あとは紙風船だっけ? それなら稲荷街の駄菓子屋に売ってた気がするよ」
二人で町娘の恰好をして、駄菓子屋に向かう。
「いらっしゃい」
店主の威勢のいい声がした。
「紙風船が欲しいのですけど」
「紙風船かい? そこの棚の所にあるよ」
おどおどと後ろに隠れている白狐ちゃんの手を取り、紙風船が置いてある棚を見に行く。
「二個でいいよね?」
「二個だと一回で終わっちゃうよ? 練習分と何回か遊ぶ分もあったほうが良いんじゃない?」
それもそうか。念のため、予備のことも考えて、ニ十個ほど買った。
そして、屋敷に戻り、早速、竹光と布でぴこぴこハンマーを真似て、それぞれ作ってみた。
「こんな感じかな?」
ぴこぴこハンマーというやつが、あまり頭に思い浮かばないので、白狐ちゃんに聞いてみる。
「いや、その大きさだと、まるで水星人とかいう人たちだよ! 紙風船を割る程度の大きさでいいよ」
「え~、折角作ったのに~、ねえ、白狐ちゃん、これでいいでしょ?」
目をうるうるとさせて、上目遣いで見上げる。
「はぁ~、じゃあそれでいいよ。私も出来たよ」
私は白狐ちゃんが作った、ぴこぴこハンマーに目を向ける。小ぶりである。
(勝った!)
自作したぴこぴこハンマーの大きさもだが、勝負も勝てる気がした。
早速、屋敷の庭に試合の準備をする。庭に落ちている小枝を拾い、戦いの範囲を決めて線を引いた。
「じゃあ、始める? 開始の合図は?」
「う~ん?参、弐、壱、零で、零になったら開始にしない?」
「うん、それでいいよ」
「それじゃあ、数えるね」
白狐ちゃんが数え始める。そして、零になった瞬間に跳ね回った。
狙うは、白狐ちゃんの背後。しかし、思うように動かない。ぴこぴこハンマーが大きすぎたようだ。
白狐ちゃんは小回りが利き、すぐに面と向かう形になった。
(ええい! もうやけくそだ!)
ぴこぴこハンマーを振りかざしたら、巻いている布がすっぽ抜けて、紙風船ごと白狐ちゃんの頭を叩いてしまった。
「うみゅ~」
白狐ちゃんの頭の上に、お星さまが回っているのが、見える。
(やってしまった……)
そこへ、暖さまと恋坡さまがお帰りになられて、怒られた。
コメント